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大津地方裁判所 昭和59年(ヨ)25号 決定 1984年3月26日

債権者

青山勝

右代理人

野村裕

玉木昌美

債務者

株式会社ニッショー

右代表者

佐野實

右代理人

畑守人

主文

一  債権者が債務者に対し雇用契約上の地位を有することを仮に定める。

二  債権者は債務者が昭和五九年二月六日付で発した恵那セラミックス株式会社への出向を命ずる旨の出向命令に従う雇用契約上の義務を負わない地位にあることを仮に定める。

三  債務者は債権者に対し、二二万八二五七円および昭和五九年四月から本案判決言渡しに至るまで、毎月二五日限り月額二二万八二五七円の割合による金員を仮に支払え。

四  申請費用は債務者の負担とする。

理由

一従業員に対し出向を命じ得るのは当該従業員の同意その他これを法律上正当づける特段の根拠がある場合に限られるものと解するのが相当であるから、以下これを本件について検討する。債権者の入社当時(昭和三八年二月)その勤務する債務者大津工場の就業規則に出向に関する規定が存しなかつたことは当事者間に争いがないところ、債務者は昭和三九年四月施行の変更後の就業規則には出向に関する規定が存する旨を主張するが、右変更に債権者の同意があつたことについて疎明がないので、右就業規則をもつて前述した特段の根拠とはなし得ない。また、債務者は従業員が出向命令に従う旨の労使慣行が成立しているとか、これについて債権者の黙示の包括的な同意があつた旨を主張するが、本件疎明資料によるも右事実を認めるに足りない。してみると、債権者には本件出向命令に従う雇用契約上の義務はなく、したがつてこれを拒否したことを理由に昭和五九年二月二五日付でなされた本件懲戒解雇も無効である。また、本件疎明資料によると、本件懲戒解雇以降債権者に支払われるべき賃金月額は二二万八二五七円であることが一応認められる。

二そして、本件疎明資料によると、本件仮処分申請にはその必要性が一応認められるので、本件仮処分申請を理由あるものとして認容し、申請費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり決定する。

(川久保政徳)

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